銀行カードローンの商品概要には、「保証会社の保証が受けられる方」などの記述があります。
この保証会社の保証とはどのような意味であるか分かっていない人も少なくないかと思います。
銀行カードローンにおいて保証会社の保証とはどのような位置づけになるのでしょうか?
また、銀行のカードローン審査と保証会社の審査はどのように異なるのでしょうか?
よく「当行及び保証会社の審査があります」と書いてあるけど、銀行以外の審査が必要なの?
銀行カードローンには保証会社の保証が必須です。
銀行カードローンに申し込みを行うと、まず最初に審査を行うのは保証会社です。
保証会社の保証を得ることができれば銀行はほぼ100%の確率で融資に応じてくれます。
後述しますが、銀行カードローンで実際に審査を行っているのは保証会社で、銀行は補足的、形式的な審査を行っているにすぎません。
筆者が銀行員時代は、カードローンやフリーローンなどの案件を入手すると、最初に保証会社に審査を上げて、保証会社の回答があり次第、申込人に仮審査通過の連絡を入れて、本契約の手続きに入るという流れでした。
銀行各社は、2017年の銀行カードローン過剰融資問題と自主規制の流れによって融資スピードに関する訴求はなくなりましたが、消費者金融のカードローンの謳い文句にある「最短即日融資」とか「最短○○分審査回答」と言った文言の根拠は「保証会社がどのくらいの時間で回答を行うか」です。
「保証人は不要」ということと「保証会社の審査が必要」ということの意味の違いは?
カードローンは保証人不要です。
カードローンのみならず、昨今のローンは保証人を取らずに保証会社の保証を必要とする場合がほとんどです。
住宅ローンですら、保証人を取りません。
保証人の代わりに保証会社が必要となりますが、保証会社は誰にでも保証を行うわけではありません。
保証会社は、保証会社所定の基準に基づいて個人信用情報、勤務先、勤続年数、年収などを総合的に審査し、保証会社の審査に通過した人にしか保証を行うことはしません。
銀行にいると、稀に「担保はこれくらいある」「これだけのお金持ちが保証人になってくれる」だからお金を貸してくれという人が窓口に来ますが、本人が保証会社の審査に通過できない人は、いくら優良な担保やお金持ちの保証人がいてもカードローンや住宅ローンの審査に通過することは不可能です。
カードローンや住宅ローンはあくまでもパッケージ商品で、何か1つでも基準を満たすことができない人へはその融資を行うことはできません。
保証会社の審査は、個人信用情報の照会、勤務先、勤続年数、年収等の情報の点数化(スコアリング)を行って、保証の可否を決定します。
銀行は何を審査しているの?
保証会社の審査に通過することができれば仮審査通過です。
では、銀行は何を審査しているのでしょうか?
銀行の審査はあくまでも確認作業です。
提出された書類が申込時に申告した情報と合っているかの確認です。
申告した勤務先に本当に勤務しているかを確認する勤務先への在籍確認や、本人確認書類に記載された住所・氏名・生年月日が合っているか、年収確認を必要とする場合には申込時に申告した年収との整合性などを確認しています。
保証会社に消費者金融の名前がよく出てくるけど、どういうこと?
銀行系カードローンの商品概要には保証会社の名前が出てきます。
保証会社で多いのは「アコム」「プロミス」「セディナ」「オリコ」などといった消費者金融やカード会社の名前です。
「安心できる銀行からお金を借りたいのに、なぜ消費者金融から保証されるの?」と言った疑問をお持ちの方も多いかと思いますが、カードローンの保証業務を行っているのは大抵消費者金融やカード会社です。
消費者金融やカード会社は平成22年の貸金業法の完全施行によって総量規制が実施され、貸し付けることができる金額が借主の年収の3分の1以内と法律によって規制されてしまいました。
これ以降、消費者金融の融資残高は激減するのと反比例して、銀行系カードローンの融資量は増加しています。
消費者金融とすれば、自社で融資できなくなった分を銀行の保証業務で稼いでいます。
実は銀行系カードローン金利のうち3割~5割程度は保証会社へ支払う保証料であると言われています。
消費者金融は自社でプロパー融資ができなくなった分、銀行への保証という形で迂回的に融資を行っているとも言えます。
消費者金融が保証するのは心配と思う人も多いかと思います。
しかし、返済さえしっかりと行っていれば、消費者金融と借主は全く関係なく、あくまでも銀行と借主だけの関係です。
後述しますが、保証会社が前面に出てくるのは、返済が滞った後の話ですので、期日通りに返済さえ行っていれば保証会社は全く関係ありません。
そもそも保証会社って何?銀行とどんな関係?
保証会社とは、銀行の融資を保証してくれるものです。
例えば100万円のカードローンの返済が困難になり長期にわたって延滞した場合には、銀行は借主に代わって保証会社へカードローンの残金100万円を返済してもらうことができます。
これを代位弁済と言います。
代位弁済後は、債権は銀行から保証会社へ移るため、借主と銀行との関係はその時点で終了し、以後は保証会社へ借主はお金を返済していくことになります。
銀行とすれば保証会社の保証さえあれば100%融資金を回収することができるため、貸したお金が不良債権化することはありません。
そのため、保証会社の保証さえつけばほぼ間違いなく融資を行ってくれます。
そのため実質的に審査を行っているのは保証会社なのです。
保証会社も金利のうち半分程度を保証料として受け取ることができるため、それ相応の収益を得ることができます。
代位弁済後は保証会社にはどのように返済してくの?
保証会社である消費者金融と借主の関係が始まるのは代位弁済後からで、期日通りに返済している間は特に関係はありません。
保証会社である消費者金融は保証した時点で、貸し倒れがあってもいいように保証料を設計しているため、代位弁済を行ったとしても収益は出ている場合がほとんどです。
そのため、代位弁済以後は「いくらなら毎月返していけるのか」などと、銀行の取り立てよりも優しくこちらの都合を聞いてくれるような場合が多いようです。
また、ある程度返済していくと「あと○○円返済してくれたら借金をチャラにしますよ」などと言った話しも少なくないようで、返済自体は保証会社から代位弁済を受けた後の方が楽になるようです。
ただし、代位弁済を受けた時点で個人信用情報へ事故情報として登録されてブラックとなってしまいます。
5年間は個人信用情報から削除されることはありません。
同じ消費者金融が審査を行っているのに、なぜ銀行カードローンの方が審査に厳しいの?
銀行系カードローンも実際には保証会社が審査を行っていると説明しました。
そして保証会社は消費者金融です。
一般的には銀行系カードローンの方が、消費者金融のカードローンよりも審査が厳しいと言われていますが、では同じ消費者金融が審査を行っているのに、なぜ銀行カードローンの方が審査が厳しくなるのでしょうか?
先ほど述べたように、銀行カードローン金利のうち、半分程度は保証会社へ支払う保証料です。
例えば三菱UFJ銀行のカードローンはアコムの保証が必須になります。
三菱UFJ銀行カードローンの金利は1.8%~14.6%ですが、このうち半分程度はアコムの保証料です。
例えば7%がアコムへ支払う保証料であるとすると、アコムは100人のうち7人までは代位弁済を行っても赤字にならない、つまり、リスク7%の顧客までは保証を行うことができるということになります。
一方、アコムのカードローンは最高金利18%で、保証会社の保証はありません。
このため、アコムのプロパー融資は100人のうち18人までは貸し倒れても赤字にならない、つまり、リスク18%までの顧客までは融資を行うことができるという考え方になります。
同じアコムが審査を行うにしても、三菱UFJ銀行カードローンの保証では小さいリスクまでしか取ることができないのに対して、アコムのプロパー融資は大きなリスクを取ることができるため、アコムのカードローンの方が審査が甘く、三菱UFJ銀行カードローンの審査には通過できなかったが、アコムカードローンのリスク許容度範囲内に収まる、つまりリスク7%超~18%以内の人までは融資を行うことができるということになります。
主要な銀行カードローン&消費者金融16社の保証会社一覧
主だったカードローンの保証会社は以下の通りです。
銀行系 | 保証会社 |
三菱UFJ銀行カードローン | アコム |
三井住友銀行カードローン | SMBCコンシューマーファイナンス |
みずほ銀行カードローン | オリコ |
レイクALSA | 新生フィナンシャル |
ジャパンネット銀行 カードローン | SMBCコンシューマーファイナンス |
住信SBIネット銀行カードローン | SMBCコンシューマ―ファイナンス |
ソニー銀行カードローン | アコム |
楽天銀行スーパーローン | 楽天カード株式会社 三井住友カード株式会社 |
auじぶん銀行カードローン | アコム |
オリックス銀行カードローン | オリックス・クレジット株式会社 または新生フィナンシャル株式会社 |
アコム | 無し |
プロミス | 無し |
アイフル | 無し |
SMBCモビット | 無し |
三井住友カード ゴールドローン | 無し |
前述したように、消費者金融のカードローンには保証会社の保証はありません。
楽天銀行やオリックス銀行のように、保証会社が2社あるカードローンは1社目の保証会社での審査に落ちた場合には2社目の保証会社へ審査を上げるため、2社保証会社のあるカードローンの方が審査に通過しやすい傾向にあります。
なお、銀行名+クレジットというような会社は地方銀行の傘下のカード会社にも多く、地方銀行のカードローンの多くが傘下のカード会社が保証会社となっている場合が少なくありません。